蝶 (涙を拭《ふ》き拭き)……あたし……あたし、……蝶々の翅《はね》で、……髪かざりを作ったの。(またおいおい泣き出す)
なよたけ いいの。いいの。昔、悪いことをしたって、今ではもうお前の中にはあんなあな[#「あんなあな」に傍点]はいなくなったんでしょ!
胡蝶 ん、……いない!
なよたけ みんなにももういないんでしょ?
わらべ達 (一緒に)ん、……いない!
なよたけ (嬉しそうに)さあ、それじゃ、もういいの!……みんなの「心」は今とても透《す》き通っている。心の底までお天道様の光が射し込んでるわ。……いつまでもこのままでいるのよ。もう二度とつまらないことはしないようにするのよ。悪いことばかりしてる人は、死んでからお月様の所へも行かれないし、来る世も来る世も、小鳥や虫に生れ変って、いつまで経《た》っても、悪いあんなあな[#「あんなあな」に傍点]に苦しめられるだけよ。……そんなことって嫌《いや》でしょ? お前達はみんな死んだらお月様のところへ行きたいんでしょ?
わらべ達 (銘々《めいめい》に)うん、行きたい! 行きたい! 行きたい!
なよたけ さあ、それじゃ、またみんな一生懸命にお天道様に
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