、去年の冬、蓑虫《みのむし》を真裸《まっぱだか》にして、冷い雪の上に捨てちゃったの。
なよたけ 無慈悲《むじひ》なこと!……蝗麻呂! お前は?
蝗麻呂 僕、蝗をたくさんとって来て、片っ端からお醤油《しょうゆ》をつけて焼いて食べた。……
なよたけ まあ、むごたらしい!……そんなことをするから、後の世の人達が食べなくてもいいものまで食べるようになってしまうんだわ。……じゃ、こがねまる! お前は?
こがねまる (非常な躊躇)……おら、……おら、……
なよたけ いいから、云いなさい!
こがねまる おら、……いつだったか、お薬鑵《やかん》の中に黄金虫《こがねむし》を一杯つめ込んで、……お湯をかけて、焚火《たきび》で沸《わ》かして、……「煎《せん》じ薬」だよってごまかして、胡蝶に飲ましちゃったイ。
胡蝶 (急に思い出して、火のついたようにおいおい泣き出す)
なよたけ 胡蝶! 泣かなくってもいいの! もうこがねまるはあんな悪いことは二度としないわね?
こがねまる (素直に)ん、……しない。
なよたけ 胡蝶! こがねまるはもうしませんって! さあ、胡蝶! お前は? お前はどんなことをしたんだっけ?
胡
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