遊びごと」だけは今後|是非《ぜひ》とも止めて欲しいもんだな。
文麻呂 (烈《はげ》しく)遊びごとではありません!
綾麻呂 (びっくりする)
文麻呂 (涙さえ含んで)お父さん、少くとも僕にとっちゃあれは決して「遊びごと」ではないつもりです。僕達の「詩《うた》」があんな巷《ちまた》で流行しているような下らない「恋歌」のやりとりと一緒くたにされては、僕は……情無くなって、涙が出て来ます。お父さん。僕はきっと立派な学者になってみせますよ。お望みなら「文章博士」にだってなります。ただ、詩《うた》だけは作らせて下さい。「文章博士」が経書の文句の暗誦《あんしょう》をするだけなら、あんなもの誰《だれ》だってなれます。だけど、そんな知識を振翳《ふりかざ》したって何になるでしょう。そんな学問はただの装飾です。いくら紅《くれない》の綾《あや》の単襲《ひとえがさね》をきらびやかに着込んだって、魂《たましい》の無い人間は空蝉《うつせみ》の抜殻《ぬけがら》です。僕達はこの時代の軟弱な風潮に反抗するんです。そして雄渾《ゆうこん》な本当の日本の「こころ」を取戻《とりもど》そうと思うんです。僕達があんな下らない「恋歌」
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