の中で育った。あたし達はきっといまにこの竹の林の中で、とてもしあわせになれるのよ。あんなあな[#「あんなあな」に傍点]なんてもうどこにもいなくなって、……どうしたらいいのか分らなくなるようなしあわせがやって来るのよ。
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さまざまな小鳥達が思い出したように美しい声で囀《さえず》り始めた。
春の陽光は眼覚めるばかりにその輝きを増し、緑色の木洩日《こもれび》の耀《かぎろ》いは一段と鮮《あざ》やかになって行く。子供達は何やらみな一様に眼を輝かして、太陽を仰ぐ。
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なよたけ 御覧!………ほら。あのお天道様のいらっしゃる限りもなくひろいひろいお空は、あたし達のいるこの竹林にまでずーっと続いて来ているのよ。あたし達はみんなお天道様のもの。なんでもかんでもみんなお天道様が創《つく》って下さったものよ。この数えきれない竹の木も、地面からにょきにょき生えて来るたけのこも、……雨彦! (指さして)ほら、あっちの方でちゅくちゅく鳴いている鳥はあれはなあに?
雨彦 目白! (目白の鳴声、一段と高く、ひとしきり)
なよたけ
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