だ。……扉は今や開け放たれねばならない。
清原 (突然すっく[#「すっく」に傍点]と立上り)そうだ! 僕、いいこと考えた!
文麻呂 (呆《あき》れて彼を見上げ)何だい、また? どうしたんだい、清原?
清原 ね、石ノ上。いいことがあるんだよ。なよたけの家のすぐ傍にね、竹籠《たけかご》の納屋《なや》があるんだ。僕達はこれからそっとそこへ行って、気付かれないようにその納屋ん中へ隠れるんだ。そうして内から様子《ようす》を伺《うかが》ってて、大納言様を待伏せするんだ。大納言様がいらっしゃってなよたけに何かいけないことをなさろうとしたら、そしたら、僕達はすぐに飛出して行って……やっちまうんだ。やっつけちまうんだ。それがいいよ。ね。それがいいよ。さあ、石ノ上! (先に立って、左の方へどんどん行く)
文麻呂 (呆気《あっけ》にとられたように聞いていたが、渋々と立上り)……そりゃ、君がその方がいいと云うんなら、それでもいいさ。この辺の地理的な状況はそりゃ君の方がずっと詳《くわ》しいんだし………
清原 (どんどん早足で行きながら)さあ、早く、早く! 早くしたまえ! 石ノ上! 早くしないともう大納言様が来て
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