しまわれる………(左手に消える)
文麻呂 (その後を渋々と追いながら、ぶつぶつと)何も行かないとは云ってやしないよ。そりゃ僕にはこの辺はどうも勝手がよく分らないんだし、……君の云うことをどうのこうのと云ったって、なにも別に………(突然、立止り、左の方を睨《にら》むようにして、大声で怒鳴る)
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おい! 待てッ! 清原! 落着け!
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[#地から1字上げ]――(溶暗)――
第二場 (幕間なし)
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竹取翁《たけとりのおきな》、讃岐《さぬき》ノ造麻呂《みやつこまろ》が竹籠を編みながら唄《うた》う「竹取翁の唄」が次第に聞えて来る。なよたけの弾く和琴《わごん》の音が美しくも妙《たえ》にその唄の伴奏をしている。わらべ達の合唱が、時々それに交る。
〔竹取翁の唄〕
竹山に 竹|伐《き》るや翁《おじ》
なよや なよや
竹をやは削《けんず》る 真竹やはけんずる
けんずるや 翁《おじ》
なよや なよや
〔わらべ達の合唱〕
なよや なよや なよや
〔竹取翁の唄〕
竹山に 竹取るや翁《おじ》
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