ので、何だか恥しそうにする)………そうかな?
文麻呂 うん。変った。……第一、言うことに飛躍《ひやく》がなくなった。弾力がなくなった。知性の閃《ひらめ》きがなくなったよ。……「竹が囁いてるんだ……」。情無いことを云うじゃないか。……まるでもう君は萎《しな》えうらぶれている。……以前のあのうち羽振《はぶ》く鶏鳴《けいめい》の勢いは皆無だ。剣刀《つるぎたち》身に佩《は》き副《そ》うる丈夫《ますらお》の面影《おもかげ》は全くなくなってしまった。
清原 (急に心配そうに)石ノ上……。僕あね、心配なんだよ。僕達のこの計画がかえってなよたけを怒らしちまうんじゃないかと思って………
文麻呂 また!……僕はもう、そんな意気地のないことを云うんだったら、君に構わず自分だけで勝手にどんどん事を運んでしまうぜ。……何度も云ったけど、これは確かにこの上もない天の配剤なんだ。君の目的と僕の目的が全く一致する……これは単なる偶然じゃないんだ。僕はそう確信している。これは天が我々に味方したんだ。……そうは思わないかい?
清原 うむ………
文麻呂 (苛々《いらいら》して)さあ、元気を出そう、元気を! 天が与えてくれた
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