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文麻呂 (沈滞した空気を振払《ふりはら》うように)ああ、何と云う静けさだろう。………ねえ、清原。ほら。聞えないかい?……時々、あちこちから、かさかさ、かさかさって妙《みょう》な音が、まるで神秘な息づかいのように聞えて来るんだ。………
清原 (あまり感興もなさそうに聞く)
文麻呂 (慎重に、耳を澄まし)ねえ、おい。……あれは一体何だろう?
清原 (しごくあっさりと)竹の皮が落ちてるんだ。………
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間――
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文麻呂 そうか……若竹がすくすくと成長して行く音だったんだな? ひそやかな生成の儀式のかすかな衣《きぬ》ずれの音だったんだな?
清原 (さり気なく)竹が囁《ささや》いてるんだ。……………
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間――
[#ここで字下げ終わり]
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文麻呂 (情無さそうに清原を凝視《みつ》め、ややあって)清原。……君は変っちまったねえ。つくづく僕はそう思うよ。本当に変っちまった。……
清原 (文麻呂にあまりまじまじと見られる
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