はないか? え?……時を見計って、決行するのだ。我々の方はすっかり覚悟は出来ているんだから、たとえ万一ここでばったりと大納言にぶつかったとしたって何等《なんら》狼狽《ろうばい》することはない。堂々と計画通りに我々の初志を貫徹するまでの話だ。なあ。清原。そうだろう!
清原 (自信なさそうに)うむ………
文麻呂 まったく煮え切らないね、君と云う奴は。……それだからみんなに云われるんだよ。当節の若い学生はなんだかんだって。……口先だけで屁理窟《へりくつ》をこねるのがいくら巧《うま》くたって、実行力のない人間はあるかなきかのかげろうだ。なあ。そうだろう?
清原 うむ………
文麻呂 僕は君に限ってそんな意気地のない男とは信じたくないんだ。君だけはそう云う軟弱な知識階級の若様連中と同列に置きたくないんだ。分るだろう?
清原 うむ………
文麻呂 (苛々《いらいら》して)さあ、清原。坐ろう、坐ろう! 坐って大納言を堂々と待伏せするんだ! (ぺったりと坐る)……坐れよ!
清原 (渋々《しぶしぶ》と彼の隣に坐る)
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長い、気まずい沈黙。
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