。……これじゃ、方角も何も皆目《かいもく》分ったもんじゃないね。……大体、我々はこれで確かになよたけの家の方向へ進みつつあるのかい? 清原。……本当に確かなんだな?
清原 確かなんだ。
文麻呂 確かにこの竹林なんだろうな?
清原 これなんだ………
文麻呂 (頼りな気に)で、……なにかい? だいぶあるのかい、まだ?
清原 もうすぐなんだ。……あっちの方なんだ。
文麻呂 それなら、もういい加減にそろそろ見えて来てもいい頃じゃないか?
清原 ……ん、……でも、なよたけの家は竹林の真中にあって、竹で出来てるんだ。……だから、すぐ傍《そば》まで行かないと見えないんだ。
文麻呂 ふーん?……保護色なんだね?
清原 ん、……そうなんだ。
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文麻呂は清原の煮《に》え切らぬ態度を不愉快《ふゆかい》に感ずる。励ますように………
[#ここで字下げ終わり]
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文麻呂 どうだい、清原。それじゃこうしようじゃないか。つまり、なんだよ、……大納言がやって来るまでにはまだ少しばかり間がありそうだから、しばらく我々はここに腰を落着けて、待伏せしていようで
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