! 誰だと思う?
清原 恋敵?
文麻呂 そうさ、清原。……貴様の手からなよたけを奪いとろうとしている憎むべき男がひとりいるのだ。
清原 (その言葉にきっとなり、………むしろ傲然《ごうぜん》と)それは誰だ!
文麻呂 大納言、大伴ノ御行だ。
清原 えッ!
文麻呂 (快心の微笑をもって)大伴の大納言様だよ。
清原 (全身の力、一時に消滅し、気絶するもののごとく、文麻呂の胸によろよろと倒れかかる。………)
文麻呂 (支えながら、狼狽《ろうばい》し)おい。清原! 清原! 清原!……衛門ッ!
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烈しい強風の中に………
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]――幕――
第二幕――一幕より数日後
第一場
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幽麗《ゆうれい》なる孟宗《もうそう》竹林を象徴的に描いたる上下幕の前で演ぜられる。
石ノ上ノ文麻呂、清原ノ秀臣、右手より登場。
清原ノ秀臣は文麻呂の後に従って、何やらそわそわと、ひどく落着きがない。云わば、気もうつろである
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文麻呂 全く、こりゃすごい竹林だ
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