》、自分の心情を率直《そっちょく》に打明けなけりゃ問題にならないよ。遠慮なんかしてたらいつまで経《た》ったってらち[#「らち」に傍点]があかない。もちろん、僕はあの当世流行のつけぶみと云う奴は大嫌いだ。こそこそまるで悪いことでもしてるように、巧《うま》くもない文章を紙に書き並べて、逃腰《にげごし》半分で打明けるなんてのは、第一、男らしくもないし、……それに卑怯《ひきょう》だ。もちろん、面と向って、堂々と口で打明けるんだ。……そりゃ、そうだぜ、君、いつまでもぐずぐずそんな態度を続けて行ったとしてごらん。せっかくの恋も水沫《みなわ》のごとく消え去ってしまうのだ。例えばね、先方でも君のことを慕《した》っているとする。……いいかい?……いつまでも君が愛を打明けてくれるのを待っている。……待っても待っても打明けてくれない。……そのうちに他の恋敵《こいがたき》があらわれて、先に結婚を申し込んでしまう。ね? 君はもう破滅だ。……君の「恋」は永久にそこで終ってしまうかもしれないのだ。
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話の途中から、空には星々が燦然《さんぜん》と輝き始めた。………
文麻呂はそっと清原ノ秀臣の反応
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