付き、折り返して1字下げ]
清原 ……しらないんだ。
文麻呂 何だい。訊《き》いてみないの?
清原 ……まだなんだ。
[#ここから2字下げ]
間――
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
文麻呂 いくつ位に見えるのさ?
清原 それが、……よくわからないんだ。
文麻呂 何だか少し頼りないね。……話したことはあるんだろ?
清原 (俯向《うつむ》いたまま、無言)
文麻呂 ね。毎晩逢って話ぐらいはするんだろ? え?
清原 (ごく低く[#「ごく低く」に傍点])まだなんだ。

[#ここから2字下げ]
長い沈黙。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
文麻呂 (しばらくは呆《あき》れたような顔をしていたが)そうか、……まあ、いいさ。……つまり、まだほんの「恋知り初《そ》めぬ」と云ったばかりの所なんだな。だけどね、清原、恋をするにはもう少し勇気を持たなくちゃ駄目《だめ》だよ。もう少し思い切ってやらなくちゃ駄目さ。僕はそう思うな。この女《ひと》こそ自分の一生を賭《か》けた唯一《ゆいいつ》無二の女性だと云う確信がついたら、早速《さっそく
前へ 次へ
全202ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
加藤 道夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング