てくれるだろうね?
文麻呂 うん。信じる。信じよう。信じないではいられないのだ。君が本当のものと嘘《うそ》のものとを識別《みわ》ける眼を持っていることだけは、僕は心から信じているんだからな。
清原 (次第に涙を催《もよお》すような感傷的な気持になって行く)………石ノ上、僕は、そのうちに君にもあの女《ひと》に一度逢ってもらおうと思ってる。
文麻呂 何て云うの? 名前は。
清原 ……なよたけ。
文麻呂 え?
清原 なよたけ。(舞台左手奥の竹林の方を指し)あすこの竹林の向うに住んでいる………
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二人共、そっちの方を眺めている。
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文麻呂 田舎娘《いなかむすめ》なのかい?
清原 竹籠《たけかご》作りの娘なんだ。年取った父親と二人暮しの貧しい少女さ。……まだ、まるで少女なんだ。汚れ多い浮世の風には一度だって触れたことのないような。……何て云うのかなあ、こう、まるで、……………
文麻呂 いくつ?
清原 え?
文麻呂 年さ。いくつ?
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間――
[#ここで字下げ終わり]
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