……実はこちらに発《た》つ前にちょっと人伝てに聞いた話では、何でも、やはり坊《まち》の小路あたりで大納言様の囲い者になっているらしく、まあ、きらびやかな唐織《からおり》の着物でも着せられて、華やかな生活を致しているのでございましょう。とにかく、あの造麻呂と云う爺はみかけによらず、大変な胴慾者《どうよくもの》ですから、娘の幸福《しあわせ》などとても考えてやるような男ではないのです。
綾麻呂 む。
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間――
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衛門 (しみじみと)しかし、旦那様、恋と云うものは大変なものでございますな。……
綾麻呂 ………
衛門 手前、文麻呂様のお心中《こころうち》をお察ししますと、不憫《ふびん》で不憫でなりませぬ。
綾麻呂 ………
衛門 恋のためによほど苦しまれたものらしゅうございます。気も狂わんばかりの真剣な恋をなすったに違いございません。そう云う恋は得てして不幸な結果に終るものでございます。……手前、どうもこうも、あの大伴の大納言様が憎《にく》らしくてなりませぬ。全く、いい年をして、若い者にさっぱりと恋を譲って
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