からあの娘にようくそのことを云い聞かせて差上げます。お父上だってきっと喜んで許して下さいますでしょう、とこうお訊《たず》ね申してみたのです。
綾麻呂 うむ。
衛門 そうしますと、文麻呂様は淋《さび》しそうに微笑顔《わらいがお》をなさって、「衛門、……あのひとはもう遠い所に行ってしまったのだよ。」などと、妙に気のない御返事をなさいます。で、今度は家内までが膝《ひざ》をのり出しまして、「文麻呂様がお嫌と申すならば致し方がございませんが、どんなに遠い所に行ったっていいではありませんか。わたくしどもがお供を致しますから、御一緒に探しに参りましょう。」と、もう一度お誘い申してみたのですが、一向乗気の御様子もなく、かえって、「馬鹿だなあ、お前達は。……あのひとはもうこの見苦しい世の中から姿を消してしまったんだよ。それを今更探しに行ったって、何になる?」などとおっしゃって、もうすっかりお諦めになっている御様子です。とりつくしまがございません。
綾麻呂 うむ。……で、なにかね、その後、その娘はどうしているのか、お前も知らないのか?
衛門 さあ、手前、その後は、造麻呂にも逢う機会がございませんでしたが、
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