ましたもので、何だかひどく心配になり、早速都へ舞い戻って、あの姉小路《あねこうじ》のお宅へ伺《うかが》ってみたのです。……ところが、どうでしょう! いらっしゃいません! お家は空っぽです! さあ、驚きまして、手前、その晩は夜通しあっちへ行ったりこっちへ行ったりして文麻呂様をお探し申しました。……ようやく、あれはもう東の白《しら》む暁方《あけがた》頃でございましたろうか、……旦那様、手前、文麻呂様があの鹿《しし》ヶ|谷《たに》にあるお母上様の御墓所の近くに、死んだようになって倒れていらっしゃるのを見つけたのでございます。すっかり旅姿に身を整えられて、気を失っていらっしゃいました。
綾麻呂 どうしたと云うのだろう?
衛門 どうしたと云うのでございましょうか、手前にも皆目《かいもく》分らないのでございます。それでも、手前が介抱《かいほう》しております内にやっとお気がつきになりましたが、……もうまるで、魂がなくなったように、空《うつ》けた顔付をなされて、ぽかんと手前の顔を凝視《みつ》めていらっしゃいました。しばらくは、そのまま、何だかわけが分らないような御様子《ごようす》でしたが、そのうちに何
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