大変な器量よしで評判でございました。手前、その造麻呂という爺とは、ちょっと知り合っておりました関係上、その娘にも幾度か逢ったことがございますが、文麻呂様が夢中になるのももっともなほど、身分に似合わず、素直で、仲々見所のある娘でございます。ところが、その娘に、旦那様、人もあろうにあの大伴《おおとも》の大納言様が眼をつけましてな、例の手管《てくだ》で物にしようとなさっているのが分ったのでございます。さあ、文麻呂様がそれを聞いて、黙ってはおられません。大納言様の道ならぬ色恋沙汰を世間に振りまいて、これを機会に思い切り懲《こ》らしめてやろうと、そう決心なさったものでございます。手前は実はちょうど、家内と一緒になる積りでおりましたもので、それから間もなく瓜生《うりゅう》の山へ帰ってしまいました。そう云うわけで、その後のことは少しも存じませんでしたが、そうこうする内に、今度は文麻呂様御自身がすっかりその娘の恋の虜《とりこ》になってしまわれたらしいのです。烈《はげ》しい「恋」に気も狂わんばかりになられたとか、これは人から聞いた噂《うわさ》でございました。手前、そう云う噂をさるところから、ふと、耳にし
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