……
なよたけ (突然、烈しい不安に襲われたごとく、表情は硬直《こうちょく》した)文麻呂! あたしをしっかり守ってて! あたしをしっかり守ってて! あたしをお月様の所へなんか行かしては嫌よ!
文麻呂 (凝然《ぎょうぜん》として)お月様!
なよたけ (心は次第に天界の彼方《かなた》に放たれて行く)文麻呂! ほら! お月様からあたしを迎えに来るんだわ! お月様からお迎えの人達が雲に乗って下りて来るんだわ! 遠くの方から、あの人達の話し声が聞えて来るわ! ほら! 文麻呂! 聞えるでしょう! 聞えるでしょう! あれは空を飛ぶ月の車の音なの!
文麻呂 (呆然《ぼうぜん》と)僕には聞えない……
なよたけ ほら! あの天の頂きの辺がだんだん明るくなって来たわ! あれは、月の国の使いが雲に乗ってあたしを迎えにやって来るの! ……文麻呂! 文麻呂! あたしをあの人達の手に渡しては嫌よ! あたしを離しては嫌よ!
文麻呂 なよたけ、僕には何も見えない……
なよたけ ああ、あたしは死にたくないの! あんたと一緒にいつまでもいつまでも生きていたいの! あたしをしっかり抑《おさ》えてて! あたしをしっかり抑えてて
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