!……あたしがあの人達の手に渡されてしまったら、もう何もかもみんなお終《しま》いなのよ! あの人達は天の羽衣《はごろも》を持って来るの! あたしに着せようと思って天の羽衣を持って来るの! それを着せられてしまったら、あたしはもう、あんたのことも、何もかも、この世のことはみんな忘れてしまわなければならないんだわ! いくら思い出そうとしたって、もう駄目なんだわ! あたしは記憶を失ってしまうの! あたしは人間ではなくなってしまうの! あたしはこの世の人ではなくなってしまうの!
文麻呂 なよたけ! お前は何を云ってるんだ!……お月様からお迎えが来るなんてそんなことがあるもんか! みんな、心の迷いなんだ。お前は疲れてるんだよ。疲れのために心が乱れてるんだよ。……さあ、あそこの草の上に腰《こし》を下ろして、しばらく身体をおやすめ。……お前はしばらく、じっと静かにしていなくてはいけない……(いたわるように彼女を抱えて、連れて行こうとする)
なよたけ ああ、文麻呂! 文麻呂!……(発作《ほっさ》的に衣裳《いしょう》の襟《えり》に手をやって、苦しそうに)この重っ苦しい着物を脱《ぬ》がして!……この着物が
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