台には緑色の薄紗《ヴェール》が幾重にも垂《た》れ下っている。
その奥の方から、竹を伐《き》る斧《おの》の音が忘我の時を刻むごとく、ひびいている。……
前舞台、左手より旅姿の石ノ上ノ文麻呂が現れる。しばらくは、耳を済ませて立止っているが、斧の音に吸い寄せられるかのように、額縁舞台の方へ歩み寄って行く。音もなく緑色の薄紗が次々に繰り上って行く。
場面は深遠なる竹林の奥。あたりは一面の孟宗竹が無限に林立し、夕陽が竹の緑に反映して、異様に美しい神秘境を醸《かも》し出している。あたりの空気は淀《よど》んだように寂然《せきぜん》としている。中央に小さな空地があり、竹取翁が、後向に坐って、じっとこぐまったまま、無心に竹を伐る斧を振っている。文麻呂は、しばらくは夢でも見ているかのように、翁の後姿を眺めている。…………
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文麻呂 お爺《じい》さん!
竹取翁 (斧を振う手を、ふと止めて、訝《いぶか》しげに、後向きのまま耳を澄ます)
文麻呂 お爺さん!……ここです。ここですよ、お爺さん!
竹取翁 (そうっと[#「そうっと」に傍点]振りか
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