小鳥のように、なよたけ、右手奥へ消える。……
文麻呂、何やら掴《つか》み難い不安にとらわれたような面持《おももち》で、彼女の去った方向を見送っている。
……突然、虹が消えた。
不意に、左手奥の方から、何やら不吉な幻聴《げんちょう》のごとく、わらべ達の声が聞えた。

だまされた だまされた
あんなあな[#「あんなあな」に傍点]にだまされた
なよ竹は大納言の手先だぞ。

文麻呂は、はっとした面持で、怪訝そうに左手の声の方向にふりかえる。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]――幕――

  第四幕

     第一場

[#ここから2字下げ]
開幕前、「合唱」が低く聞えて来る。

 合唱

白雲の たなびく里の
なよ竹の ささめく里の 天雲の
下なる人は 汝《な》のみかも 天雲の
下なる人は 汝のみかも 人はみな
君に恋うらむ 恋路なれば………
われもまた 日に日《け》に益《まさ》る
行方《ゆくえ》問う心は同じ 恋路なれば………
契《ちぎ》り仮なる一つ世に
踏み分け行くは 恋のみち
踏み分け行くは 恋のみち

静かに幕があがる――
竹模様に縁取られた額縁《がくぶち》舞台。
額縁舞
前へ 次へ
全202ページ中135ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
加藤 道夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング