変な天気になって来た! あ、あなた方も、さ、早く!……なにをそう呑気《のんき》に抱き合ったりなぞ、しているのです! こ、これはひどい雨だ! さ、さ、あなた方も早く……
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再び、前よりももっと烈しい電光と、続いて雷鳴。大納言は叫び声を上げて消え失せる。
二人は何の物音も感じないかのごとく、驟雨《しゅうう》の中に、寄り添って立っている。……もう一度最も烈しい電光。……雷鳴なし。
やがて、……
烈しい雲脚《くもあし》が次第次第に薄らいで行く。……あたりがだんだんだんだん明るくなって来た。……
長い間、身動きせず、無言のまま寄り添って、二人は立っている。
再び至福の太陽が雲間から、輝き出た!
雨に濡《ぬ》れて、あたりは金色に輝くごとく……
見よ! 大きな虹《にじ》があらわれた!
きらきらと輝く御所車の上つかた、斜めに天空へかかっている。
なよたけは文麻呂の胸に埋《うず》めていた顔を上げる。なよたけの涙も止った。輝かしい、この上もなく輝かしいなよたけの微笑《ほほえ》み。
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文麻呂 なよたけ!
なよたけ 文
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