手にした竹の枝をみて)おや、おや、大変なものをお家《うち》から持って来たんですね。(男女の笑声)まあまあ、それは持っていなさい。持っていた方があなたには似合います。(男女の笑声)
文麻呂 なよたけ!
御行 さあこちらのこの汚《きた》ない恰好《かっこう》をしたのが、あなたの聟君です。
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男女達、腹を抱えて笑う。
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なよたけ (やっと文麻呂に気がついて)……文麻呂! (文麻呂の胸にすがりつくと、急に気がゆるんだように、大声を上げて、泣き出す。……)
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男女の哄笑《こうしょう》、再び爆発。
突然、物凄《ものすご》い電光と同時に、天地の揺らぐような雷鳴。……あたりはみるみるうちに暗くなった。烈《はげ》しい豪雨《ごうう》が降り出した。男女の群集、恐怖の声を上げて、消え失せる。二人の外には、大納言だけが仰天《ぎょうてん》したような顔をして、残る。
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御行 (空を見上げ、歯の根も合わぬ震《ふる》え声)ああ、こ、これは大
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