《みす》てられてしまったって、俺にはなよたけがついている。清原や小野に裏切られてしまったって、俺にはなよたけがついている。……なよたけ! お前だけは僕を見棄てはしないだろうね! なよたけ! お前は僕のものだ! お前だけは僕のものだ! なよたけ! なよたけ※[#感嘆符二つ、1−8−75]
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同時に、多数の男女の哄笑《こうしょう》が爆発する。
上下幕が静かに下る。
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第三場(幻想の辻広場)
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ひざまずいている文麻呂を前にして、平安人達が男女群をなして取り巻いている。嘲笑《ちょうしょう》、私語。気違い、気違いなどと囁《ささや》き合っている。……文麻呂の背後には、正装した大納言大伴ノ御行。……
舞台中央には、華麗な御所車が一台止っている。美麗な装飾をほどこした竹簾《たけすだれ》がかかっていて内部は見えない。
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御行 そう云うわけで、皆さん、間もなく皆さんの前に連れ出してお目に掛けますが、あの御所車の内にいらっしゃるお姫様も、やっぱり多少この辺
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