めく里の 天雲の
下なる人は 汝《な》のみかも 天雲の
下なる人は 汝のみかも 人はみな
君に恋うらむ 恋路なれば
われもまた 日に日《け》に益《まさ》る
行方《ゆくえ》問う心は同じ 恋路なれば……
(合唱につれて、背後の灰色の上下幕に様々な色彩の光が、異様な幻想風のイメージとなって交錯《こうさく》し、やがて一面に鮮《あざや》かな緑が占領して行く)
小鳥の声が、あちこちから聞えはじめる。
そして、どこからともなく、わらべ達の唄う「なよたけの唄」が美しくひびいて来る。
なよ竹やぶに 春風は
さや さや
やよ春の微風《かぜ》 春の微風
そよ そよ
なよ竹の葉は さあや
さあや さや
なよ竹やぶに 山鴿《やまばと》は
るら るら
やよ春のとり 春のとり
るろ るろ
なよ竹の葉に るうら
るうら るら
様々な小鳥達の鳴声が、次第にその数を増して行き、竹の葉のさざめきと共に、美しい緑に包まれたなよ竹の里を文麻呂の心の中に呼び醒《さ》まして行く……
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文麻呂 そうだ。世間の者から見棄
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