てモデル台の上に現れた。
 第一日目は、彼女は裸体となつたが、私達にくるりと尻をむけて後向に立つた。
 私達は、ばり/″\絵筆の音をさせながらお麗さんを描いた。
 私達は何故に、彼女の尻を懸命に描かなければならないか、それは芸術のためであつた。
 彼女自身も何故に、自分の尻を男達に描いて貰はなければならないか、それも芸術のためであつた。
『芸術のために』『芸術のために』『芸術のために』この小さな室は、芸術のために暑苦しくストーブは燃えた。
 第二日目
 彼女はこゝろもち体を横に向けた、彼女が体中に厚く白粉をぬつてきたので人々は抗議した。
 第三日目
 彼女はポーズをより大胆に私達の方にむけることが出来た。
 第四日目
 彼女は三日目よりも、より前方に裸体を向けることができた。
 第五日目
 彼女はまつたく私達の前方に向くことができた。
 反対に男達は、彼女の尻に愛着を感じてゐるかのやうに、彼女の前に廻ることを恐れだし、彼女の背後に、背後にと画架を移動さした。
 私と『アーキペンコ』といふ綽名のある秋辺といふ男とだけが、お麗さんの前方を怖れなかつた。彼等は写実主義の画家であつたし私と秋辺
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