なんて、肉体の美感をだいなしにしてしまふ、お麗さんがきたら、この次から白粉をつけないやうに注意してくれ給へな、
蘭沢は困つたといふ顔つきをした。
間もなく女は現れた。
――遅くなつてすみませんでした。
彼女は優しかつた。彼女の顔は果して美しく化粧されてゐた。
私の思つてゐたやうに、彼女は果して裸体になることを怖れた。
――着物を着たまゝで、写生して下さいな。
――それは困ります実に困ります。
私達は声を合し彼女に嘆願した。
――ぢや半身だけね、腰から上だけ脱ぎませう。妾《わたし》こんなことはじめてなんですもの。
――それは困ります実に困ります。
私達は声を合し彼女に嘆願した。
――では思ひ切つてね、すつかり脱いでしまいませう、最初は後を向かして下さいな、わたし恥づかしいんですもの。
――それは困ります実に困ります。
私達は声を合し彼女に嘆願した。
彼女はカーテンの蔭で衣服をぬいだ。
――それストーブをどん/″\燃やせ。
蘭沢は、大きな声で誰かに命令した、女が素つ裸で姿態《しな》をつくるのはなか/\難かしいものらしい、お麗さんは滑稽な感じに全身をくねらし
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