とは未来派の画家であつたからだ。
(五)
私と秋辺とが、なぜに彼女の真実なものをこはがらなかつたか。
私と秋辺とは、未来派の宣言書第九項
『吾れら、世界唯一の衛生なる戦争を、軍国主義を、無政府党の破壊的行動を、人を殺す所のうるはしき観念を、しかして婦人の軽蔑を讃美せんとす』
といふ未来派の主将マリネッツイの『婦人軽蔑』を信じ、これを彼女に適用したのである。
どうして私や秋辺が、女たちのもつとも軽蔑すべき箇所をおそれる理由があるだらう。
私をいつか銭湯でおびやかしたシラコ[#「シラコ」に傍点]の婆さんの様に、私たちの一団のためにまつたくお麗さんも羞恥をうばはれてしまつた。
女たちが裸をおそれる理由は、お麗さんが全身に濃く白粉をぬつてきてまで、現実的なものを最後まで偽り、掩ひかくさうとする虚栄的な目的にほかならない。
私と秋辺とは、彼女の前方に、存分に彼女の羞恥をうばひそして最後に馬鹿々々しくなつてきた。
そしてお麗さんの背後を描き出したころ、始めて羞恥を放り出した男たちが、をそる/\彼女の前方に廻つて描き出した。
――秋辺すばらしいものを発見した、婦人にこん
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