な美事にかくれた意志があることを発見したよ。
 ――うむ鋼鉄艦の意志だ。
 秋辺も同感した、不意に女の背中を平手で、ぴしやり、ぴしやりたゝきつけて秋辺は感激しお麗さんを驚かしたのであつた。
 婦人の首筋から背中にかけての感じは、非常にすぐれたものであつた、腕と腕との間隔は広大で、ゆたかな線が盛りあがつてゐた。
 其後私は女たちの最も美しい箇所を、鋼鉄艦の意志をあらはした広い背であることを信じるやうになつた。

    (六)

 研究所は一ヶ月程つゞいた。それきりお麗さんはばつたり来なくなつた。
 それはお麗さんに、画家たちがモデル代を支払はなかつたからであつた。
 研究所は閉鎖しなければならなかつた。その後蘭沢の口から、私の『最後まで疑問にしてゐたこと』お麗さんが少しも裸体をおそれなかつた理由を聞きだすことができた。
 私は最初からの思惑通り彼女が芸術の理解者ではなくて、お麗さんの家は非常に貧困で、彼女が芸術のためにの口実に、両親や、姉妹のために米代をかせぐべくモデルとなつたことが判つた。
 勿論親たちが彼女の裸になつてゐることは知らなかつた。
 研究生がさつぱりあつまらず、それにな
前へ 次へ
全14ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング