つてゐて、筋肉はどこもこゝも今にも叫びさうに身構へてゐたのであつた。
小さな街の画家連は急に裸婦を描きたくなつたのだ。
冬は青いものがみんな雪の下に隠れてしまふので、情熱家達はその憂鬱な感情の捨場に苦るしんだ。
――研究会を開かう、モデル女をみつけようぢやないか。
気の早い日本画家の蘭沢は、すぐ飛び出て、そして何処からかお麗さんを発見できた。
(三)
私達はアトリヱを探し求めた。
何よりも光線の充分に室内に射しこむ家、そして彼女の肉体を、自由な距離から描くことの出来るやうな、大きな部屋を探し廻つた。
そして室内は余り大きくなかつたが、明るい一室を、或る風呂屋の二階にみつけた。
芸術家などゝいふものは、降神術の中の人物のやうなものだ、そのやることが人間離れがしてゐて動作に特色がある。
一人の素裸の女を、数人の男達が取囲んで狂人眼《きちがいめ》をして彼女の肉体の各部分を、細大洩らさず絵に描きあげようなどゝいふ計画は、この画家仲間を離れては到底思ひももうけぬ欲望であるのだ。
彼女の体を描くさまは烏が餌を突きまはすやうな現実的なものだらう。
室は好都合にも総硝
前へ
次へ
全14ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング