は幸福なものだと噂してゐる、ともあれ彼女は、柿を一つ二つ転がした絵を描きたがらないで、草花を描いたら第一人者だらう、他人の真似の出来ない伸々とした自然な描写がある、大作はまあ人気を保つ手段程度で止めておくべし

    徳岡神泉小論

○…世間では神泉を苦悶の行者のやうに見てゐるが、いやしくも芸術と名のつくものをやつてゐるからには神泉程度の勉強ぶりを行者扱ひするのはおかしい、他の連中が色気が多すぎるので、ちよつとばかり手堅い作品を見せれば、苦悶だとか、業苦だとかいふ、神泉は目立つのだ、神泉はたしかに画壇でも追究派の一人に属して人柄もまた甚だ深刻である
○…神泉は明確な主題の決定がなければ、筆をとらない、だから彼の描くものには、ソツがないし作者の意図がはつきりしてゐる点、彼の絵を見ていて気持がいゝ、彼の絵が問題になる場合には、世間的な取り上げられ方ではなく、絵画の技法上の問題として取り上げられる場合が多く、したがつて若い連中にとつては、神泉の作は研究題目として十分に興味がある
○…しかし神泉研究は往々にして、錯誤を招く、ある者は、神泉は実に新しく時代的で本人もまた時代へ革新的な絵画を目指
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