、ある域に達してゐたが、写実に喰ひ下り方が足りない。
△上村松篁――は、逸性と童話味とを汲む。
△橋本明治――『浄心』は特選であつた、仏像の前の女人は古いテーマとモダニズムとの結びつきを割に成功させてゐる、女の衣服の腰の線の簡略化はうまい、線の動きに奇妙な柔らかな感触を感じさせる作家である。
△福田豊四郎――『樹氷』は線の躍動味がねらひである、鹿の立体を筆触の重ねでこれほど出すといふことは非凡である、難を云へば月の位置が不確定なことゝ、鹿の尻に加へた色が平俗的である、月明りと雪明りとの交錯が美しい。
△吉岡堅二――作者の切迫感をかんじさせる『馬』は、単純化をねらつてゐる、線の錯雑な味が有機化してゐない恨みがあるが、色彩の調和は良かつた。
△久連石雨董――『仔馬』デッサンの不確かな割に、画面をよく生かしてゐる、殊に馬の鼻ヅラの鈍角な線は、よく仔馬を語つてゐる色彩も良い意味の甘さが流れてゐる。
△小川翠村――『追はるゝ山鹿』鹿の形態をよく観察してゐる態度がみえ、三匹の鹿の形の交叉のうまさ、皮膚の実感性、など日本画の質感の出し方として上々である、但し追ふ犬が拙い。
△野口謙次郎――『焼岳』山
前へ 次へ
全419ページ中349ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング