ことの得な点は、ならんで仕事をしてゐると自分の欠点を他人がやつてくれてゐるのをよく発見することがある。
    ◇
 私は絵を描き始める、丁度五分位経つたとき鼻唄がでてくる、さういつた時が肝心なときである。
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 技巧に就いて――技巧などは花火のやうなものである、それを出しきつてしまふか、とめるかが問題である、出しきらずに例へ低くても、もうちつと手前で止める、さうしたやり方が出来がよい。
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 佐伯裕三などは呼吸の切れた作家のお手本である、あれだけ描いて真蒼になつてゐる。
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 坂本繁二郎は昔から同じことをやつてゐる男であつた、さうかと思ふと坂本とは反対にミヅテンのやうにがらがらと画風を変へてゐる連中も少くないが、結局坂本は個性的な作家である。
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 絵の仕事は、自分が喜んでゐられるかどうかといふことが大切である。たとへば赤い帽子をかぶつたとする、自分がおかしければ他人もおかしい、そうでなければ平気でかぶり通せるわけだ。
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 研究所などで研究生が乱暴な絵を描いてゐる、昼がきて弁当のパンかなにかを出してこの連中が喰べてゐるが、そのまづいパンを如何
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