にも大切さうに喰つてゐる、私は思ふせめて自分の描いてゐる絵をパン位に大切に描いてくれたらと思ふ。
◇
古賀春江の絵は好きだが、それは彼が病人であつて、あゝいふ絵をかいたから良いので、もし健康な普通の人があゝいふ絵を描いたらはり倒してやりたい位である。
◇
青木繁[#「青木繁」に傍点]といふ男は実に変つた男であつた、青木が田舎から帰るとき、シルクハットを冠つて、燕のやうな格好をした洋服を着て、『やあ、いま来た!』といつた調子で現れたときは、ふきだしてしまつた。はたから見たらその奇行に驚ろくが、青木の気持を知つてゐる者からみたら、やることが奇行でもなんでもよい、自然な無邪気なやり方であつた。友達の留守に、友達の絵の具箱を無断で持ち出して絵を描いてくる、そんなことをよせといふと彼の言ひ草が変つてゐる。
『おれは良い仕事をやるのだ、そのためにはすべてのろくでもない画家は、おれの埋め草になつたらいゝのだ!』彼はこの調子であるから、仲間にも誤解をうけた。下手なお前よりも、自分は後世にのこるやうな仕事をするのだから絵の具は俺に使はせろといふわけである。そんな具合だから、青木は非常
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