――の国土を護る式の題材には賛成できない。渡辺氏の指導力が若い作家達にかうした題材の選択の上に模倣者があるとすれば問題である、芸術の題材を政治に結びつける誘惑を若い連中に与へるやうなものであるからである、渡辺氏の場合私は氏の大作は作品でなくてジャアナリズムだと考へてゐる、馬鹿力を出して作品をつくるといふ精力主義が陥るワナは、文学にせよ、美術にせよ、批判精神を失つた芸術家が、大作主義と技術主義に引つかゝる、こゝでは作品の大きさと技術を指示する以外に手はない、渡辺氏の場合にも『小品』に優れたものが多い。小品には人間の暖かさを発見できるからである。

      坂本繁二郎小論

○坂本繁二郎氏の絵画に就いて少し許り長く書いてみる、何時も『馬』許りを描き、毎年同じやうな画風で押し通してゐる坂本氏の作家的な地位に就いては、誰もまだこの画家に対して決定性のある言葉を吐いてゐるのを聞かない、寸感や、小印象や、漠然と『良い』とだけ言つてゐるのは聞いた、前にも述べたやうに題材は『馬』と決つてゐる、画風はあの通りである、それでゐて批評者達は作者が態度を決めてゐるのに、何故批評を決めないのであるか、或は決
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