めることが不可能であるのか、どつちであるのか? こゝに坂本氏の地位の微妙なところがある、こゝに芸術の妙味と、現実の面白さがある、坂本氏の芸術は怖ろしく偏つた芸術であるが、この偏向の芸術を現在何の不思議さも感じさせずに会場の一隅に列べさせてをくやうになるまでには、坂本氏の人間的強さと現実克服の長い間の聖戦がある、いま坂本氏の作品が一つの平衡状態に於いて我々に観させるやうになつたといふことは、言ひかへれば坂本氏の芸術が勝つたことになる。画面の上で何時も平衡状態を打破つて、いかにも年々発展し、飛躍してゐるかのやうに見せかけてゐる画家がいかに多いことか、本質的な変化が作家の心内に訪れるのを待ち切れないで一気に画風を変へるといふやり方で、幾分でも発展的なコースを辿れるのは、若い間のほんの僅かな期間だけである。現実とは如何に峻烈なものであつて、組み伏せるには余りに頑強な相手であるといふことに気がついた者は其処で改めて慎重にシキリをし直すものである、坂本氏の芸術態度はピタリと決つたシキリと緩慢な動きの中に大きな技を発見する、それを仮りに証明するとして、坂本氏の作品を制作年時代順に列べてみたらいゝ列ぶ
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