しろ相当神経の行きわたつて抜け目のない描出をしてゐると考へる。岩井の表面的稚気や稚拙さは相当不自然なものがある。むしろ私は岩井の制作態度でうたれるものがあるとしたら、画面全体に流れてゐる重厚さが好きだ。私は彼の色彩にも驚ろかない、それは新しい美学の世界では、すでに岩井の色はクラシックに属するからである。彼が今後いかに時代的な新しい色感をとりいれることができるかどうかは、興味ふかいものがある。好漢をして更に飛躍せしめよである。更に私は岩井の制作態度に就いて彼の写実主義の行詰を痛感させられる、つまりヘーゲル的な究極点にきてゐるやうに思ふ『芸術の目的はイデーと形態との同一性をば眼と想像とに示すことである、それ(芸術)は現実の外観と形態との中に於ける永遠と、神聖と、絶対的真理との発現である』――この言葉はヘーゲルの言葉であるが、なんと岩井弥一郎の画に表現された芸術観と一致したものがあるだらう。
こゝまでは過去の写実主義者も行きつくことができた。この観念論的方法も、個人的には岩井式に絶対境に到達できた。だが一度この個人的な信念も、絵となつて現はれるとき、社会的批判に堪へなければならない。その瞬
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