ゐる。こゝに、一つのヱピソードを語れば、氏は其後帝展審査員としての不首尾なものがあつたといふ、その理由はかうだ。その失策といはれるものは、唯審査会場で、あまり露骨に大胆に自己の意見を述べたためだといはれてゐる。それが先輩や仲間の不快を買つたことになつたのだといふ。今ではさうした話も笑ひ流せる一※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]話であるが、それが事実であつたとすれば、当時の光瑤氏の面目躍如たるものがある。またさうした理由が審査員不首尾の理由だとすれば、その理由は、若き時代の光瑤氏の満々たる闘志の現はれとして、むしろほゝゑましいものがある。
 しかし世間ははるかに冷酷であり、そのほゝゑましい※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]話もまた、画壇政治の中にあつては深刻な様相を呈してくる、「燦雨」とか「雪」といつたそれにつゞく作品が、「熱国妍春」のやうな感動を与へなかつたといふ理由の下に、何か光瑤の仕事が落ちたといふ印象を与へたのである。それは確かに「熱国妍春」のやうな執着力は、其後のこれらの作品には見られないかも知れないが
前へ 次へ
全419ページ中160ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング