高度な感情の喚起を経験したに違ひない――』といはせ小倉氏を指して『近代的な明朗主義』であると断じてゐるのである。
こゝに小倉遊亀氏の古くからの観賞者がゐたとして、彼は女史の草花の写実的な描き方の中に、『高度な感情の喚起』を感じてゐたとせよ。またさうした草花ものを、小倉遊亀氏の実際的な真個うの仕事と観察し、そこにまた彼女の実力も潜伏してゐたと感じてゐたところが、突然、草花が『浴女』の上では裸となり、『浴後』ではちよつと許りつゝましく肌ぬぎになるといふ、テーマの作品を見せられたとしたら、その観賞者は『浴女』『浴後』から『高度な感情の喚起』を呼び起すどころか、冷水を浴びせられたやうに、驚ろくに違ひない。
然も作風的にも、かなりに正統的なリアリストの描く『花』類を見せてくれて、しかも日本画家があまり手がけたがらない、西洋草花類をも、美しく描ききつてゐる。花の抒情詩人としての小倉氏は、姓名もかはつた許りか画題上の相貌を変へて立ち窺はれたといふことは、相当に驚異的な変り方であらう。『浴女』に於ける浴槽の中の湯のゆたりゆたりと揺曳する状態の描写は、たしかに彼女の写実家として神経をうちこんだ描き方
前へ
次へ
全419ページ中118ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング