この問題を直ぐに氷解してしまふ。
噛んで含めるやうに、色々の方面から、解いてきかしても、どうしても理解しない場合、これは彼女達ばかりとはいへまい、男達の場合にも
『不意に襲ふもの』があれば、いつぺんに何もかも判つてしまふものらしい。
――不意に襲ふもの。
俺自身も、その問題も判然としないものに悩み苦しんでゐる。
しかし俺はすつかり安心をしてゐるのだ、俺の顔が、実に美しく蒼ざめた時、背後から『不意に襲ふもの』のある瞬間に、俺はすべてを解くことができるであらうと信じてゐるからである。
俺は神様に感謝するといふことが、生れつき大嫌ひな人間だが、たつたひとつだけ、時折祈祷をしてやつて罰が当るまいと思はれることがある。
それは彼女が健康だといふことであつた。
皮膚は馬の皮のやうに、丈夫に出来てゐて、殴つても、蹴つても決して傷がつくといふことがなかつた。ところがこの詐欺師奴が、この健康をさへ、誤魔化さうとしたことがあつた。
俺は真個《ほんと》うは健康な女が嫌ひであつた。そのひとつの理由として健康な女に限つて色が黒いといふことも挙げることができる。
市街の一隅には、大日本赤十字病
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