出てきた、そして手でその男を静かに押して自分の家と隣家との境目まで、さうした状態で流浪人を押しやつた。
 流浪人はしづかに歩るいてゐたが、いまにもぶつ倒れさうになつた、商館の主人は、男を隣家まで押してゆくとさつさと家に帰つた、
 流浪人はまたもや次の家の前にじつと突立つてゐた、その家役所勤めの人の住んだ家であつた、その家の主人が出て来て、前と同じやうに、男を押して少しでも早く自分の家の前をこの不幸な男を去るやうに邪剣に扱つた。
 男は三軒目の家を去つたところが、その街の殆んどはづれであつた、男はその場に突然膝をついたそこは幾分窪みになつて、寒い風を避けるかのやうであつた、彼はその場に倒れ、眼をつぶつた、すると一人の男がその場を通りすぎた、この男もなにやら虚洞な眼をして、じつとこの行き倒れを見てゐたが、のろくさとした動作で流浪人の体に手をかけ、その体から衣服をはぎだして、見るとその男は殆んど上着は破れてゐて、彼は流浪人から着衣をはぎとるとそれを歩きながら着た、流浪人は裸体のまゝ、寒い雪の上に倒されてゐて、彼は少しも体を動かさない、でも眼は案外生々として、まだ生きてゐることを証明した、男は
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