去つた、そして流浪人はそこで死んだ、冬の間この死体の上には雪がつもることをしたが、強い風はすぐ積つた雪をふりはらつて、カチカチとした裸体をむき出しにしてゐた、通行人は稀にそこを通つた、然しその死体をチラと見たきり少しも心に動揺を起さなかつた、野犬がその死体に近よつた、しかし鉄よりも硬ばつた死体を鼻でさはつたきり、絶望的に去つた、
そして春がまた死体の硬ばつた凍へがしだいにとけてきた、死からほぐれてゆく生命といふものがあるとすれば、冬の間凍つた肉体が春になつて漸次溶けて行き、彼の霊のない肉体が新しいフショク物として地面の中にしだいに溶け沁み行つてゆくその過程のやうでもあつた。
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無題
一人の上京学生がゐた彼はA炭礦所有主の息子であつたA炭礦では炭礦夫達の生活の合理化のために共同炊事や、共同購買組合風のものを設けてゐると、二人の左翼学生にむかつて自分の父親の政策の自由主義的なことを誇りながら語つた。
左翼学生は質ねた、そこで礦夫達の娯楽設備の方はどうなつてゐるね、すると彼は答へた、娯楽は当礦には設備されてゐない、そこから約二里出たと
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