れない、甲記者がいまにも青龍刀を手にして自分の大切にこゝまでもつてきた皿と壺を粉みじんに叩きこはしさうな幻想にとらはれたからだ、――そして乙記者はいつた、『ところで僕は今日限り社を廃めさしてもらひます』
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押しやられる流浪人の話
満洲に冬が来た、流浪の満洲人は奥地から都市に辿りついた、彼は夏の間兵士であつたのか、空腹と饑餓が襲つて、彼は極度に衰弱してゐたために歩行困難の状態であつた、
彼が一都市についたときは今にも倒れさうであつた、一軒の家の前に立つた、その家は骨とう店であつた、彼はじつと店内をながめてゐた、心は空腹のために虚ろになつてゐた、すると中から店主が現はれて、叱、叱、と叫んだ、
流浪人はこの叱り声の意味を理解したかのやうに柔順にその店の前を立去つて、その家の次の商館の店に立つた、彼は食を求めてゐるのではなかつた、既に食を求める力もなく、いま一椀の飯を与へられても彼は喰べる気力はないだらう、彼は立つてゐる力を次第に失ひ始めたために、じつと肉体の動揺を避けるために、立つてゐるだけであつた、
だが、その家からまたもや主人が
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