、ところで乙記者はオーバーの内ぽけつとから一枚の皿と小さな壺とをとりだしてそれを卓上にのせた皿は紫がゝり、壺は朱の色と驚ろくほど美しいものであつた、
 乙記者は語りだした、彼は戦地で兵士の一群と行動を共にした、兵士は支那××の博物館に突入して行つた、そして銃の尻で陳列品のケースを叩きこはして廻つた。
 この混乱の最中に、彼はそのケースの中から二つの品をとりだしてポケットに入れた、それからそれを背中に背負ふやうにして、長い/\時間このこはれものを大切にしてきた、帰途朝鮮の博物館に寄つて、自分のもつてきた品と同じやうな品が列べられてゐたので自分の品の時代考証をした、その品はをそろしく古く、貴重な品であつた、
 こゝまで語つてきて、彼はところでその時価は壺が一万二千円、皿が八千円のもので、いまにもすぐに金になるのだと説明した、
 人々はあつと驚ろいた、そしてその壺とその傍の血のにじんだ青龍刀とを見くらべてゐた、ブキヨーな乙記者は突然とびあがるやうにして机の上の壺と皿とを鷲掴みにしてそれをオーバの下に押しかくした、それは怖らくさつかくであつたかもしれない、或は事実として現はれるのであつたかも知
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