好戦的なものが、ムラムラとわいてきました。
『ひとつ気のすむまで、何処の馬の骨ともわからぬこの男と議論をしてやれ―』
 と思ひましたので
『私が何か間違つてゐるやうな、貴方のお話しですが、それはどういふ理由からでせうか―』
 すると彼はつとめて冷静にしやべらうとして、嫌らしい程の特別に丁寧な言葉を選んで、話しかけてくるのでした。
『ははあ、あいつは英国流の紳士だな―』
 と直感しました、そこで私も英国流の紳士か、十九世紀のロシヤの貴族のやうな、胸糞の悪くなるやうな形式的な、くすぐつたいほどの言葉を選んで話しかけてやれと思つたのです、たとへば
『君、明日僕の処に遊びに来給へよ―』
 と率直に言つてのけるところを
『ちよつとお伺ひいたしますが、あなたの御都合がおよろしかつたら、お差支へがございませんでしたら、私の宅までお越し下さいませんでせうか、もしおいで下さるやうでしたら私の一家にとりまして、これ以上の光栄はございません―』
 といふ風な、極度に引きのばした言ひ方で、この見も知らぬ議論好きの男をからかつてやれと、ある残酷な気持になつたのです、
『貴方といふ方は、私はすこしも存じませんので
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