洋菓子店で偶然に知り合つたのです、或る日私は若い友人とその店のテーブルを囲んで、熱心に話しこんでゐました、話が『自然科学』にふれたとき、一隅から私に声をかけた男があつたのです。
『失礼ですが、貴方のいまのお話しは間違つてはをりませんでせうか―』
 とその男は話しかけるのです、見ると全く見も知らぬ年頃三十歳位の、小綺麗な服装をした、嫌味のない好青年でした。
 ぴつちりと身についた洋服を着て、髪は髪油で光り、勤め人風に刈りこまれ、鼻の下には官吏らしい短かい髭と、薄い唇とがありました、彼は落着いた声で私に話しかけるのです、彼が表面の落着きに反して、興奮してゐることは、彼の手にもつた細味のステッキがぶるぶると小刻みにふるへてゐるのでわかりました。
 青年の傍には、背の高い服装も化粧も万[#「万」に「ママ」の注記]艦飾の若い女が坐つてゐました、青年と女とは顔型の上からも性格の上でも全く似たところがなかつたので、この二人が兄妹だとはそのとき思はなかつたのです。
 私は見も知らない男から、突然非常に論争的な態度で話し掛けられたことは、決して良い気持ではありませんでした、しかし私は『これは面白い―』と
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