ので、それを忘れてきたものは
「かう帽子を忘れてきては、おれの頭もよくないにちがひない――」
 と自分の頭の悪さに考へ及ぶといふ性質をもつてゐました、そこでバッタたちは帽子を忘れまい、忘れまい、と努力しました。なかには帽子を拾はうとして、電車に礫かれた男がありました、世間ではかう言ひました。
「実に馬鹿な男だ、あいつは始め帽子を追ひかけてゐた、そのうちに帽子ではなく、頭を無くしたのだと考へ違ひをしたものらしい、でなければ、たかが帽子一箇を拾ふことで、大切な真個うの頭を無くすることはあるまい――」

     (下)

 おじぎ好きのバッタたちは、最初は帽子をかぶつたまゝで、頭を下げて、挨拶をしました、すると帽子は頭から離れて地面に転げ落ちました、かぶつたまゝでお低頭をすると、帽子といふものは頭から離れて、転げるものだといふことが、のみこめるまでには、三十年もかゝりました。
 帽子がころげ落ちては、おじぎができないので、頭から帽子をぬいで、かるく会釈して、ふたたびかぶるといふ方法でも、けつして相手を軽蔑したことにならぬといふ習慣をつくりだしたのでした。
 それから十年ほどたつて、今度は帽
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