、のこのこと舞台の上に出て行つて、芝居をやつてゐる憎いと思ふ俳優の頭を、金槌でぽかりと殴つたので、この政治劇団は一興業で二三人は死ぬといふ有様であつた。
 一方見物人はなにごとも舞台の上の芝居と許り思つてゐるので、舞台の上でそんな事件が起きても一向平気なもので、後からそれが本当に俳優が殴り殺されたのだと知つて驚ろいたほどだ。
 然し見物人もこの劇団のごたごたもたびたび重なると馴れてしまひ、少しも驚ろかなくなつてしまつた。
 或るとき俳優が出演中に、反対派の道具方が背景を打ちつけてをかず、わざと重い背景を倒した、背景の山は倒れてその下敷となつて一度に六人の俳優が圧し潰され、大変な騒ぎとなつて舞台裏まで丸見えとなつたが、見物人は平気な許りでなく『まあ、役者がゐる間は、芝居が続くだらうし、役者がゐなくなつたら劇団は潰れるだらう―』といつて見てゐるほど平気で、政治劇団の人々が次第に興奮してゆくのと反対に、見物人の方は益々冷静になつてゆき、見物人も殖えて却つて芝居が繁昌を始めたが、劇団側にしてみれば、俳優は少なくなるし、主役のなり手がなくなつて益々苦境に陥つた。
 次の興業にも、他の都市から嫌が
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