もんだよ、機嫌や、風向きの悪いときには、用心し給へ、まあ自分の外套はなるべく自分で着るやうにした方がいゝね』といつた。

  奇妙な政治劇団

 政治劇を専門にやる劇団があつた、この劇団は芝居の上手な俳優達が集つてゐた。演技も真に迫つてゐて観客から見ては、舞台の上の俳優達が何処までが真個《ほんと》うに涙を流し、どこまでが空涙かわからぬほどであつた。
 ところで俳優同志[#「志」に「ママ」の注記]は、無類に仲が悪くて、舞台裏で絶えず喧嘩をしてゐる許りでなく、舞台の上にまで喧嘩をもちだし、芝居の演技最中憎いと思ふ相手役の足を、思ひ切り踏みつけるのがあるかと思ふと、力いつぱい本気で殴つたりした、然しさすがに名優揃ひなので、芝居の筋書だけはこはさなかつた。
 一方見物人は妙に俳優達の芝居が真に迫つてゐるので、感心をして見てゐるのであつた。
 俳優同志の仲違ひは、だんだん猛烈になつてきて、ついには道具方にまでそれが移り、道具方もそれぞれ二派に別れて、啀み合ひを始めた、道具方は背景を造つたり、打ちつけたりする金槌といふ武器をそれぞれ腰にさしてゐるため、劇団の騒動は荒つぽくなり、道具方が芝居の最中に
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